調査にご協力いただいた保健所保健師の皆様へ

お忙しい中、調査にご協力いただきありがとうございました。皆様から頂いたデータを以下報告書としてまとめました。

1. はじめに

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの皆様の尽力に心より敬意を表します。
 私たちは、今回のパンデミックでの保健所保健師の皆さまの経験を、将来発生するパンデミックの教訓とすべきと考え、本調査を実施いたしました。
 パンデミック禍でお忙しい中にもかかわらず、全国365名の皆さまにご回答いただきました。ご協力いただいた皆さまへ厚く御礼申し上げます。
 結果がまとまりましたので、ご報告させていただきます。

2. 調査の背景、目的及び方法

 研究背景

 COVID-19によるパンデミック禍(以下、コロナ禍)において、医療従事者は非医療従事者と比較して、心理的苦痛、疲労、不安、抑うつ等症状が出現するリスクが高いことが明らかにされています。今回のパンデミックは、保健所数が削減されてきた状況下で発生し、かつ長期に及ぶことを考慮すると、保健所保健師は極めて大きな負荷を受けていることが予測されます。しかしながら、保健所保健師に関する調査は十分ではありません。また、そのような危機的状況において、なお継続的に果たしている保健師たちの背景には、逆境を跳ね返す力である個人のレジリエンスや、組織として危機的状況に対し予め計画し、予期せぬ緊急事態に適応する力である組織レジリエンスといった要因の存在があるのではないかと考えました。

 目的

 本調査では、コロナ禍の保健所保健師の経験の実態を明らかにするとともに、彼らの経験や個人/組織レジリエンスがバーンアウトとどのような関連を示すのかを明らかにすることを目的としました。

 方法

 全国の保健所保健師を対象にアンケート調査を実施しました。
 了承を得られた29自治体(71保健所)の統括保健師様、ご担当者様に調査票配布へご協力いただき、計365名(回収率33.5%)から回答いただきました。
 本調査は、筑波大学医学医療系医の倫理委員会の審査と医学医療系長の許可を受けて実施しました。(承認番号:令和4年7月1日 第1761号)

3. 調査に協力してくださった方々の概要

 調査票への回答にご協力いただいた方のうち、同意欄での同意のない調査票及び分析に必要なデータの収集できない調査票を除いた、351名からの回答を分析対象としました。
調査にご協力いただいた保健師の皆様の概要は表のとおりです。

・全国の保健所保健師のデータと比較すると年代比率について概ね一致しました。

・また、月100時間以上の残業時間を経験した方がおよそ4割を占めました。

4. 主な結果


自由記述は、その一部を抜粋させていただきましたが、枠からはみ出る程の記述してくださった方も少なくありませんでした。
皆様が肌で感じて来られたであろうフェーズによって異なる苦悩や困難、そしてその緊迫した様子が明らかになりました。

 

5. まとめにかえて

 まずは、パンデミック禍の大変な中、私たちの研究にご協力いただいた全ての皆様に深く御礼申し上げます。

 本調査では、保健師の皆さまがコロナ禍において、様々な大変な経験や困難に直面され、バーン アウトに至り得る過酷な状況に置かれていたことが、とても良く分かりました。経験の中でも特に、 「I 陽性者や住民からの苦情や暴言」および「III パンデミックや地域の特性による困難」については、将来の新興感染症によるパンデミック禍でも同様の困難に直面することが予想されます。

 それらの経験によるバーンアウトを緩和し、離職に至らず、地域における保健所や保健師としての役割を継続して発揮するためには、人的レジリエンスが、特に重要である可能性があります。人的 資源や職場内での情緒的支援、スーパーバイザーの存在がバーンアウトを和らげる可能性については、他の研究でも既に多く明らかにされていることですが、コロナ禍の保健所保健師でもその関連が確認されました(Leiter,1993; 高橋ら, 2010; 山口ら, 2015)。

 また、自由記述では、応援職員の導入や本庁による部署の新設によるやり取りすべき部署数の増加が、大変だったこととして記載されていたことからも、必ずしも、全ての対策や組織体制の整備が、バーンアウトの緩和につながるわけではない可能性が考えられました。

 今回の調査では、パンデミック禍における保健所の組織レジリエンスの概念や内容の更なる検討が、新たな研究課題として明らかになりました。また、同時に現場レベルでは、中堅期を中心とした保健師からの意見を幅広く積極的に取り入れることも重要であると考えられます。

6. おわりに

2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変わり、一般国民以上に保健所の職員の皆様、特に保健所で中心となって防疫に携わってこられた保健師の皆様にとって、転換期を迎えられることと存じます。私たちは、そのことで、徐々に皆様の大変だった経験や組織の状況への関心が薄れる前に調査を実施することが、次の新興感染症パンデミックや健康危機へ生かすことに、大きな意義があると考え、本研究をパンデミック禍に実施いたしました。

お忙しい中、身体的精神的な疲弊を感じる中、調査項目が多く大きなご負担を感じながらも、ご回答いただいた方もいらっしゃることと思います。自由記載欄には、過酷な状況を伝える鮮明な記述を多くいただき、皆様の声を無駄にできないと、身の引き締まる思いでした。

今後も、健康な地域をつくるという皆様と同じ最終目標を見据え、この貴重なデータから得られたことを最大限、現場にお返しすべく研究に取り組んで参ります。

ありがとうございました。

 

本調査、調査報告に関するご意見、ご要望などがございましたら、遠慮なく下記連絡先までご連絡ください。

toomiya[at]md.tsukuba.ac.jp(宮﨑、大宮)
[at]を@に変換して送信してください

※本研究は、公益財団法人日本科学協会の笹川科学研究助成及び財団法人倶進会による助成を受けて行われました(研究代表者:宮﨑星)

M2 GUOさんが学位授与式を終えました。

4月から博士後期課程で頑張ってください!

【看護学類】保健師課程20名 全員国家試験合格しました。

(合格率は看護師100%、保健師100%、助産師(大学院)100%)

20名中11名が保健師として就職、また2名は大学院進学です。

写真の3名はそれぞれ保健所保健師、市町保健師として旅立ちます。

本日、筑波大学大学院看護学位プログラムの学位授与式が執り行われました。
大島さん、辻さんの2名が無事修了しました。二人はそれぞれ保健師として羽ばたきます。

筑波大学大学院 人間総合科学研究群
看護科学学位プログラム(前期・後期)

地域健康・公衆衛生看護学研究室

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